日本植民地教育史研究会

日本植民地教育史研究会のサイトへようこそ。本研究会は1997年3月29日に設立されました。

2020年02月

1月29日にご案内した標記の催しは、中止されることとなりました。
詳細は、こちら をご参照ください。
(2020年2月26日)






天理大学の前田均会員より
下記研究大会のご案内が寄せられました。

*****以下、提供された情報より転載*****

下記のとおり、2020年3月7日(土)に台北の東呉大学にて「天理台湾学会第2回台湾研究会」を開催致します。
参加希望の方は、発表資料や会場準備の都合上、2月9日(日)までに学会のメールアドレス(tenritaiwan(@)gmail.com)までご連絡ください。
*メールを送る際はアットマークの( )を取ってください。
みなさまのご参加をお待ち申し上げております。

日時:2020年3月7日(土)13時30分〜16時30分
場所:東呉大学 外雙溪校區 第一教學研究大樓10階(日語教育多功能教室)
(東呉大学のキャンパスマップはこちら:地図中の「R」の建物です)
参加費:無料 一般来聴歓迎

プログラム(発表題目はすべて仮題、時間は発表+質疑応答):

【論文構想発表】 司会:山本和行(天理大学)
13:30〜14:30
奥野善雅(国立台湾師範大学大学院)「日治前期幼稚園之研究」

【一般研究発表】 司会:松尾直太(実践大学)
14:30〜15:30
白春燕(国立清華大学大学院)「新旧の狭間ー在台日本人保坂瀧雄の劇文学研究」
15:30〜16:30
今井淳雄(天理大学)「「公共圏」創出の場としての渡船」


2020年5月9日の記事
をご参照ください。



下記の通り第22回研究大会(シンポジウム&自由研究発表)を開催します。

会員・非会員を問わず、多くの方のご参加を歓迎いたします。
★例年とは違い「日曜・月曜」の開催です。お間違えのないようご注意ください。

日時:2020年 3月 8日(日)、9日(月)

参加費:1000円(二日分)

会場:
大東文化会館 (部屋:K401, 402
〒175-0083 東京都板橋区徳丸2-4-21
東武東上線 東武練馬(大東文化大学前)駅北口を下車し右折。イオン板橋前交差点右折。

【1日目】 3月8日(日)13:00~18:10
全体会/シンポジウム
12:30   開場 受付
13:00 講演 佐野通夫会員
テーマ:私の朝鮮植民地教育史研究の歩みについて

14:00〜14:05   休憩

《シンポジウム》
テーマ:戦後日本植民地教育史研究の蓄積と課題
―朝鮮、満洲、南洋群島・南方占領地を中心に―

14:05~14:20(15分)趣旨説明・発題
佐藤 広美 会員(東京家政学院大学)
14:20〜14:45(25分) パネリスト報告①
 《朝鮮地域の場合》
井上 薫 会員(釧路短期大学) 
14:45~15:10(25分) パネリスト報告②
 《満州地域の場合》
山本 一生 会員(上田女子短期大学)
丸山 剛史 会員(宇都宮大学)
15:10~15:35(25分) パネリスト報告③
 《南洋群島・南方占領地の場合》
小林 茂子 会員(中央大学・非)
 
15:35~15:45 ~休憩~

15:45~17:00  討論

17:10~18:10 《総会》
~18:10終了予定~

会場を移動し、18:30より懇親会

〇シンポジウム趣旨説明・発題
コーディネーター・佐藤 広美会員(東京家政学院大学)
 私たちは、数年前から、戦後日本における日本植民地教育史研究がどのように展開されてきたのか、その蓄積と成果はいかなるものであり、今後、どのような課題究明が求められているのか、その点を明らかにしてみたい、という考えを強めてきました。今回は、昨年の2019年3月の台湾(岡部芳広報告)に続く、2回目となります。その後、「日本植民地教育の政策と思想」を検討の予定にしています。
 私たちの研究会は、若い人たちが少しずつ参加してくださり、また、留学生の方々の数も決して少なくありません。こうした若い方々に、これまでの植民地教育史研究の蓄積と成果がいかなるものであるのか、それを明確にして伝えて行くことはとても重要なことではないのかと思えました。良き研究の道案内になるのではないのかということです。それぞれの自分の関心ある地域・領域にのみ閉じこもらず、日本の植民地教育全体がどのようなものであったのか、その全体像を認識しておくことは、それぞれの専門領域の課題をより深めていくためにも必要なことではないのか、という考えからでした。
 戦後70数年が経ちました。日本植民地教育史研究が、それぞれの地域・分野でどのような展開があったのか、その成果と今後に究明しなければならない課題は何か、報告をお願いすることにしました。

【2日目】 3月9日(月)9:15~12:25 
自由研究発表
(発表35分、質疑応答20分)
08:45 開場・受付
09:15~10:10 発表①
張 小栄 会員(東北大学大学院)
  テーマ: 「満洲国」における帝国主義日本の教育政策のイデオロギー的背景
10:15~11:10 発表②
藤森 智子 会員(田園調布学園大学)
 テーマ:1910年代‧20年代の台湾における「国語」普及運動(仮)
11:10~11:20  休憩
11:20~12:15 発表③
宇賀神 一 会員(神戸教育短期大学)
  テーマ:第4期国定国語教科書と「満洲」
12:15 諸連絡  
12:25 大会終了



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1日目・シンポジウムのパネリスト発表要旨

報告1【朝鮮グループ】:井上 薫会員(釧路短期大学)
 戦後の日本における朝鮮研究は多く、網羅的な内容検討は難しい。報告者の限られた観点・分野から特徴的なものに絞って概観したい。
 報告者は教育政策史研究が基盤のため、「支配と抵抗」の二項対立批判から、政策史は批判対象のごとく見做される向きもあったが、支配の巧妙さ、制度下で生じた実態への具体的な対処、地方差については、例規などに散見される通牒類の検討がなお必要と考える。当日は普通学校・農業教育の事例で示したい。
 政策史における研究状況だが、法令成立の経緯については、「併合」以前〜第一次朝鮮教育令は佐藤由美(2000)、第二次(1922年)は廣川淑子論文(1977)や久保義三(1979)、第三次(1938年)は皇民化政策の一部として宮田節子(1985)、義務教育構想に向けては佐野通夫(2003)の研究があり、その意図について、前掲・佐藤(2000)、稲葉継雄(2010)が主要な学務官僚、総督の構想・主張等からまとめている。ただし、期間の長い第二次朝鮮教育令期の修正(四年制校の農業教育問題〜職業科設置)にまで研究が及んでいなかった。また、稲葉は雑誌資料を軸に論じたため、なお近年の史料発掘で深められる点はあるだろう。以上の教育政策が、背景に存在した各種の治安法と密接に関係していたことを鈴木敬夫(1989)が明らかにしており、井上薫(1995A,B)も参考とした。
 教育機関、特に普通学校の普及について、渡部学(1961A,B・1964)により「公立普通学校体制」が朝鮮人の民族機関の換骨奪胎により進められたこと。このうち私立学校を巡って起きたアメリカ宣教師・ミッションと総督府との拮抗・葛藤・抵抗・相克について李省展(2006)が論じた。また、金富子(2005)は、呉成哲(2000、韓国)の成果も踏まえた就学状況に対し、女子の広範囲に及んだ「不就学」を問題とし、ジェンダーとの関係で総督府の行った教育政策が行き届かない実態を浮き彫りにした。なお、板垣竜太(2008)は尚州のケースから、士族という階級要素も就学・識字状況と密接に関わっていたことを明らかにしており、教育の主体との関連で興味深い。
 朝鮮史全体で議論が進んでいる分析視角については、三ツ井崇「朝鮮」(日本植民地研究会編『日本植民地研究の現状と課題』、2008)が、「植民地近代化論」、「近代的規律を内面化した『近代主体』」による「植民地近代論」、「『近代』のとらえなおし」の動向等についてその特徴が述べられており、有益である。自らも含めて、教育史研究の中でもこのような分析枠の有効性を積極的に検討、検証すべきであろう。

報告2【満州グループ】: 山本 一生 会員(上田女子短期大学)、丸山 剛史 会員(宇都宮大学)
 本グループでは、戦後における満洲教育史研究を対象とした。グループ内で議論したことは、「満洲」を「満洲国」と狭く捉えず、華北占領地からモンゴルに至るまでの、「北支」「蒙疆」「蒙古」までを対象としたことである。
 先行研究の収集は、既存の国内データベース(国立国会図書館、cinii、J-STAGE)でキーワード検索を行いヒットしたもの、および『植民地教育史研究年報』掲載論考、『史学雑誌』などを手がかりとした。その結果約450点の著作・論文を確認し、そのなかから満洲教育史研究史において画期をなすと思われる著作・論文、新たな視点・視野を与えてくれる著作・論文を選定した。国際関係論や技術教育、社会教育など学校教育に閉じることなく、多様な研究を取り上げることを意識した。また日本語で読むことができる中国側の研究を取り上げる。ただし、学校史をどの範囲まで扱うか、満洲における朝鮮人教育をどのように扱うかなどといった課題が残っている。

報告3【南洋群島・南方占領地グループ】: 小林 茂子 会員(中央大学・非)
 本グループでは、南洋群島、南方占領地関連の両地域における教育および日本語教育について、①文献目録作成、②両地域に関する重要な文献の抽出、③代表的な論考の候補案選定、の3点をめぐって話し合いを進めてきた。
 今後は、まず、時期区分による研究動向の特徴を考えたい。仮に1980年以前、1980年代~2000年、2000年代~2010年、2010年以降、との時期区分案が出たが、これが妥当なのか、特に両地域の教育関係文献が僅少であることをどう考えるか、などの課題がある。次に、その結果から今後の研究の課題や方向性を提案したい。例えば、現地住民の教育と日本人の教育との関係、旧宗主国(欧米諸国)が残した教育内容と日本の教育支配の確執、などが挙げられるだろう。最終的には、代表的な論考10本を選定する予定である。



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2日目 自由研究発表要旨

発表① 「満洲国」における帝国主義日本の教育政策のイデオロギー的背景
発表者:張 小栄 会員(東北大学大学院環境科学研究科先端文化環境専攻博士課程)
 「満洲国」は、建国精神として「王道主義」を唱えた。先行研究では、駒込武等によってその思想史的な研究がなされているが、「王道主義」の実践的教育の側面からの研究は検討されていない。
  本稿では、「満洲国」の学校教育政策の整備過程における「王道主義」理念の現出様態を考察することによって、帝国主義日本の教育政策のイデオロギー的背景の解明を課題とする。その際、当時の教科書を用いてそれが変質していくプロセスを再検討することにしたい。まず、建国以前の「王道主義」をめぐる議論を分析し、それが論者により意味内容が異なっていたことを解明する。次に、建国後の「王道主義」教育の実践を検討することによって、建国前の矛盾が顕在化しながら、関東軍が「独創的王道主義」という概念により軌道修正するに至る経緯を述べ、さらに国立高等師範学校教科書を用いてそれがいかに反映されたのかを検討する。

発表② 1910年代‧20年代の台湾における「国語」普及運動(仮)
発表者:藤森 智子 会員(田園調布学園大学)
 日本統治下の台湾における社会教育を中心とした国語普及施設は、1930年代に「国語講習所」として全島統一の施設が設立された。1930年代後半からは皇民化運動が進展し、国語普及施設として「国語講習所」は大々的に増設された。本発表では、1930年より前、すなわち全島的な国語普及施設が設立される前の国語普及の状況を検討する。各州庁で行われた国語普及を、台北州の鶯歌庄を例に取り上げ、国語普及の実態を検討する。

発表③ 第4期国定国語教科書と「満洲」
発表者:宇賀神 一 会員(神戸教育短期大学)
 1933(昭和8)年以降順次編纂・刊行された第4期国定国語教科書(通称「サクラ読本」)に着目して、そこに収録された「満洲」に関する教材の成立過程とその特徴を考察することをとおして、日中戦争開戦へと向かう時期に「満洲」がどのように教えられたのか、国策的側面からみれば教えようとしたのかを明らかにする。


(補足情報)
当初、次の発表も予定されていましたが、
covid-19問題の深刻化により、発表者が辞退されるという経緯がありました。
(大会延期決定前の辞退であったため、プログラムから削除されました)

発表「韓国の土となった日本人」浅川巧の生き方を韓国高麗大生と考える
発表者:三橋 広夫 会員(早稲田大学)
浅川巧は、朝鮮民芸・陶芸の研究家・評論家。朝鮮半島で植林事業を行う傍ら、朝鮮半島の陶磁器と木工を研究紹介した。彼の墓はソウル郊外の忘憂里共同墓地にある。当時の多くの日本人とは違って朝鮮人と対等につきあった人物の一人として知られる。彼の生き方を韓国高麗大生がどう考えたか報告したい。

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